Arcserve UDP のジャンプスタートを試してみる
Arcserve UDP では災害対策として復旧ポイントサーバ(以下、「RPS」と省略)間でバックアップ データを遠隔地に複製(レプリケート)する機能があります。このレプリケート機能の強みは、継続的な増分バックアップと連動して少ない転送量でデータを複製できる事です。
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しかし、初回はどうしてもフル バックアップになるので、WAN 経由だと転送に時間がかかり、ネットワークへの負担も大きくなります。
そこでお勧めしているのが「RPS ジャンプスタート」という機能です。RPS ジャンプスタートでは NAS や外付け HDD などの外部ストレージを使って物理的にデータを運ぶことで、RPS 間の初回のレプリケートを効率的に行えます。
今日はその RPS ジャンプスタートの手順を画面付きで解説します!!
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■ 本番サイトでやること
1. 外部ストレージ(外付け HDD や NAS)の接続と一時データ ストアの作成
2. 一時データ ストアへのジャンプスタート(復旧ポイントのレプリケート)
3. 一時データ ストアの停止/削除と外部ストレージの搬送
■ 災害対策サイトでやること
4. 外部ストレージの接続と、一時データ ストアのインポート
5. 一時データ ストアからのジャンプスタート(復旧ポイントのレプリケート)
6. 一時データ ストアの停止/削除と、本番サイトからのレプリケートの開始
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■ 本番サイトでやること
以下の図は RPS ジャンプスタートの手順をまとめたものです。
一見複雑そうに見えますが、要は「本番サイトで RPS から外部ストレージに復旧ポイントを複製する」と「災害対策サイトで外部ストレージから RPS に復旧ポイントを複製する」の2点を行うだけです。それぞれ細かく見ていきましょう。
1. 外部ストレージ(外付け HDD や NAS)の接続と一時データ ストアの作成
まず、本番サイトの RPS に、搬送用の外部ストレージを接続します。今回の記事では外付け HDD を使いました。
その上で、一時的にデータを保管するデータ ストアを、接続した外部ストレージ上に作成します。Arcserve UDP コンソールで、本番サイトの RPS を右クリックし、コンテキスト メニューから [データ ストアの追加] をクリックします。
[データ ストアの作成] 画面で、必要事項を入力していきます。
複製元のデータ ストアでデュプリケーション(重複排除)や暗号化が有効になっている場合は、複製先のデータ ストアも重複排除/暗号化をそれぞれ有効にする必要があります。今回は複製元のデータ ストアに合わせていずれも有効にしました。
データの保管先([データ ストア フォルダ]、[データ デスティネーション]、[インデックス デスティネーション]、[ハッシュ デスティネーション])はすべて、先ほど接続した外部ストレージ上のフォルダを指定します。今回は E ドライブが外部ストレージに当たります。
また、暗号化を有効にしたので [暗号化パスワード] も入力します。このパスワードが無ければデータを取り出すことが出来ないので、情報漏洩のリスクを減らせます。(ここで指定したパスワードはこの後、災害対策サイトでデータストアをインポートする際に使います。)
一通り設定して [保存] をクリックすると、一時データ ストアが作成されます。
なお、デデュプリケーションを有効にされている環境でのデータ ストア設定の注意点を以下の記事に掲載しています。
2. 一時データ ストアへのジャンプスタート(復旧ポイントのレプリケート)
次に、本番サイトの RPS に保存されているバックアップ データ(復旧ポイント)を一時データ ストアに複製します。本番サイトの RPS 配下にある複製元のデータ ストアを右クリックし、[RPS ジャンプスタート] をクリックします。
[RPS ジャンプスタート] ウィザードが上がってくるので、 [ソース 復旧ポイント サーバ] と [ソース データ ストア] が、それぞれ複製元の RPS とその配下のデータ ストアであること確認します。
画面下のノード欄では、災害対策サイトに復旧ポイントを複製したいバックアップ対象ノードを選択します。今回は時間の関係で容量が小さいノードを1つだけ選択しました。
[ターゲット データ ストア] として、先ほど作成した搬送用外部ストレージ上の一時データ ストアを選択します。
RPS ジャンプスタートの内容を確認する画面が出てきます。複製元(ソース)と複製先(ターゲット)が逆になってしまうと大変なので、間違いが無いように、念のためここでもしっかり確認してください。
[完了] をクリックすると、ジャンプスタートが開始され、一時データ ストアに復旧ポイントが複製されます。
画面右下の [最近のイベント] を見ると RPS ジャンプスタート ジョブが実行されているのが分かります。
RPS ジャンプ スタート ジョブが終了したら、対象ノードの復旧ポイントが正しく複製されている事を確認します。今回はアクティビティ ログを確認しました。(※1)
外部ストレージを RPS から切り離すため、一時データ ストアを選択して [停止] します。停止したのを確認したら [削除] をクリックします。なお、この手順でデータ ストアを削除しても復旧ポイント自体は削除されないのでご安心ください!
一時データ ストアの削除後、外部ストレージを RPS から外して災害対策サイトに搬送 🚚 します。
■ 災害対策サイトでやること
さて、災害対策サイトに復旧ポイント(バックアップ データ)が入った、外部ストレージが届きました。この外部ストレージから災害対策サイトの RPS へ復旧ポイントを複製します。
4. 外部ストレージの接続と、一時データ ストアのインポート
災害対策サイトの RPS に外部ストレージを接続した上で、データ ストアをインポートします。この「インポート」というのはストレージ内のデータをデータ ストアとして登録させるための操作です。
災害対策サイトの RPS (※2)を右クリックして、[データ ストアのインポート] をクリックします。
データ ストア フォルダのパスと暗号化パスワードを入力して [次へ] をクリックします。
本番サイトで一時データ ストアを作ったときの設定がそのまま出てきます。確認して [保存] をクリックすると、データ ストアがインポートされます。
5. 一時データ ストアからのジャンプスタート(復旧ポイントのレプリケート)
インポートで登録された一時データ ストアを右クリックして、[RPS ジャンプスタート] をクリックします。
ここからの手順は、本番サイトでやったのとほぼ同じです。[ソース 復旧ポイント サーバ] が災害対策サイトの RPS で、 [ソース データ ストア] が、外部ストレージ上の一時データ ストアになっている事を確認します。
[ノード名] 欄には本番サイトで複製したノードの復旧ポイントが表示されています。今回は全部(と言っても1つだけですが)を選択します。
[ターゲット データ ストア] で、災害対策サイトの RPS の内部のデータ ストアを選択します。
[完了] をクリックすると、RPS ジャンプスタート ジョブが開始され、災害対策サイトの RPS 内部のデータ ストアに復旧ポイントが複製されます。
6. 一時データ ストアの停止/削除と、本番サイトからのレプリケートの開始
RPS ジャンプ スタートのジョブが終わったら、復旧ポイントが正しく複製されているか確認します。今回のジョブでは全ノードの復旧ポイントを複製したので、データ ストアの容量が同じになっている事からすべての復旧ポイントが一時データ ストアから複製されていると判断できます。
なお、本番サイトでやったのと同じように、アクティビティ ログでノード毎に複製されている事を確認しても OK です。
ジャンプ スタートが完了したら一時データ ストアの役割は終わりです。これも、本番サイトでやったのと同じように、一時データ ストアを選択して [停止] し、その後 [削除] します。
最後に本番サイトの RPS から災害対策サイトの RPS へ復旧ポイントをレプリケートするタスク(※3)を、既存のプランに追加します。次回、本番サイトで増分バックアップが行われたら、増分データのみがレプリケートされることでしょう。
ちなみに、プランにレプリケート タスクを追加した直後に [今すぐレプリケート] を実行してみたら、既にデータが一致しているという事でレプリケート ジョブがスキップされました。ジャンプスタートのおかげで大容量のデータがレプリケートされずに済むことが分かりますね。
以上、本日はホテが RPS ジャンプスタートの使用方法を紹介しました。次回は RPS ジャンプスタートを利用する上での注意点について解説します。
<関連記事・技術情報>
※1 アクティビティ ログを細かく見ているとセッションを "レプリケート" しました、という文が出てきます。そうなんです、ジャンプスタートは内部ではレプリケートが動いているんです。
※2 ちなみに、今回は本番サイトの RPS に同居している Arcserve UDP コンソールの配下に、災害対策サイトの RPS も登録しています。
※3 今回は本番サイトと災害対策サイトの RPS が同じ Arcserve UDP コンソールに登録されていたので「レプリケート」タスクを使います。それぞれの RPS が別な Arcserve UDP コンソールで管理されている場合(Arcserve UDP Cloud Hybrid がまさにそのパターン!)は、「リモート管理の RPS へレプリケート」というタスクを使います。
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