さくらのクラウド と Arcserve UDP を使って 災害対策
皆さんこんにちは、実は、2025年2月27日よりさくらインターネット様の「さくらのクラウド」で Arcserve UDP の提供が開始されています。
https://www.sakura.ad.jp/corporate/information/newsreleases/2025/02/20/1968218704/
Arcserve UDP を「さくらのクラウド」上で構築することにより、以下のようなことが可能です。
① レプリケート(オンプレミス上のバックアップデータのレプリケート先)
② 復旧&移行(レプリケートしたデータを使用してベアメタル復旧)
③ バックアップ(「さくらのクラウド」上のバックアップ)
実際にさくらのクラウドを使って①のレプリケートを試してみましたが、いくつか大事なポイントがあるので、この記事を使ってお伝えしていきます。
# ポイント1:Arcserve UDP コンソールを設置するサイト
まず1つ目のポイントは、Arcserve UDP コンソールを設置するサイトになります。レプリケートを行うには、オンプレミスにだけ Arcserve UDP コンソールを構築する場合と、オンプレミスとクラウドの両サイトに構築する場合があります。レプリケートの処理だけを考えると、オンプレミス側に Arcserve UDP コンソールがあればさくらのクラウドにバックアップ データを届けることができますが、オンプレミス側で通信障害やサイト障害が発生すると、さくらのクラウド環境のバックアップ管理ができなくなるため、いざというときに利用できなくなってしまいます。このため、Arcserve UDP コンソールはオンプレミスだけではなく、さくらのクラウドにも構築するのがおススメです。
なお、災害対策をする上で大事なのは、どのリージョンに災害対策サイトを構えるかとなります。さくらのクラウドでは2種類のリージョン(東京 / 石狩)でそれぞれ2種類のゾーンが存在しますので、オンプレサイト側で利用する Arcserve UDP の所在地に応じて、ご選択ください。
さくらのクラウドに Arcserve UDP のコンソール や復旧ポイントサーバを構築するには Windowsの IaaS を追加しますが、Arcserve UDP (コンソールや復旧ポイントサーバ) を運用するために必要なメモリを載せます。最小の動作要件を満たす場合は、CPU 4 Core / メモリ 24 GB で設定します。(※1)
※1 同一の Windows IaaS 環境に Arcserve UDP コンソールと復旧ポイントサーバを同居させる想定 (計算式は下記参照)
導入する OS/ソフトウェア | メモリ |
Windows Server 2022 (※2) | 2.5 GB |
Arcserve UDP 復旧ポイントサーバ (RPS) | 8 GB |
Arcserve UDP コンソール | 8 GB |
合計 | 18.5 GB |
※2 Arcserve UDP で導入可能な OS は Arcserve UDP の動作要件をご覧ください。(今回は Windows Server 2022 の環境で実施しています)
参考:Arcserve UDP Compatibility Matrix (Arcserve UDP 動作要件)
なお、さくらのクラウドで サーバを追加する方法は、サーバの作成・削除のリンクを参照してください。さくらのクラウドで Arcserve UDP を構築する方法は構築方法のリンクを参照してください。
# ポイント2:Arcserve UDP の重複排除機能
2つ目のポイントは Arcserve UDP の重複排除になります。Arcserve UDP ではバックアップ データ量を抑えるために、重複排除機能を利用できます。重複排除機能は Arcserve UDP の標準機能ですが、復旧ポイントサーバに追加のメモリ搭載が必要になります。必要な容量は下記サイジングの参考記事をもとに計算してください。
サイジングの参考記事:Arcserve UDP 復旧ポイント サーバ(RPS)の容量計算が簡単になります!
この重複排除機能を利用すると、オンプレミスからさくらのクラウドにレプリケートする場合にも重複排除の機能が働き、ネットワーク帯域の細い環境でも重複排除を利用しない環境と比べると比較的速く転送が可能になります。なお、転送元となるオンプレミス側で重複排除を利用される場合は、受け側となるさくらのクラウド側でも重複排除の設定が必要になりますので注意してください。重複排除は便利な機能ですが、メモリ追加のコストが増えるため、転送時間やさくらのクラウド側のストレージを考慮するか、それともコストを優先させるのかを考えておくことも大事なポイントになります。
# ポイント3:ポートの開放
3つ目のポイントはポートの開放になります。オンプレミスの Arcserve UDP と通信するため、今回確認した手順では、さくらのクラウドで追加した Windows で、[インターネットに接続] を設定しています。インターネット接続を選択すると、グローバル IP が有効になります。オンプレミスとさくらのクラウドの双方にある Arcserve UDP コンソールで名前解決を行いました。(名前解決は hosts ファイルを編集しました)
そして必要なポートだけを通すため、追加した Windows でパケットフィルタの設定と、そのパケットフィルタに Arcserve UDP の通信ポートを含めました。運用に応じて以下に追加でポートの許可/可否を追加してください。
プロトコル | 送信元ポート | 宛先ポート | 備考 |
TCP | 3389 | Any | 管理用の RDP 接続 |
TCP | 8014 | Any | RPS 間の レプリケート |
TCP | 8015 | Any | RPS 間の レプリケート |
Arcserve UDP に関するポートの役割は、下記ドキュメントを参照してください。
なお、オンプレミス側の Windows OS では、Arcserve UDP のインストール時にファイア ウォール設定で TCP 8014/8015 ポートを開けていますが、インターネット ルーターなどでポート制限をかけている場合は、ルーター側でもポートの開放を行ってください。
その他 Windows OS で必要な設定は、環境によって異なる部分があるため、ここでは割愛します。
# ポイント4:データ転送(レプリケート)のための設定
4つ目のポイントは、さくらのクラウドにバックアップ データを転送するための設定になります。今回試しているのは、オンプレミスとさくらのクラウドの双方に復旧ポイントサーバを構築しているパターンですが、この場合は異なるコンソール間で転送する設定が必要になります。まず受け側となるさくらのクラウド側では、下記の設定が必要になります。
・オンプレミス側に渡す OS アカウント
・オンプレミス側に渡す Arcserve UDP のプランの作成と共有設定
OS アカウントは、さくらのクラウドに構築する Arcserve UDP コンソールで作成します。(デフォルトの OS アカウントを利用することも可能です) このアカウントは、異なる Arcserve UDP コンソールにアクセスするために必要なアカウントになります。
次にさくらのクラウド側の Arcserve UDP コンソールでオンプレミス側に渡す Arcserve UDP のプランを設定します。このプランには、タスク1として「リモート RPS からのデータのレプリケート」を追加します。(他のタスクを追加することも可能ですが、今回はタスク1のみ設定しています)
プランを作成した後で、設定タブにある共有プランで用意したアカウントとプランを紐づけます。
これでさくらのクラウド側の設定は終了です。
次にオンプレミス側の Arcserve UDP コンソールで、バックアップと「リモートで管理された RPS へのレプリケート」のタスクを入れたプランを作成します。このレプリケートタスクでは、複製先となるデスティネーション設定でさくらのクラウドにある Arcserve UDP コンソールと、さくらのクラウド側で用意したアカウントを指定し、接続をクリックします。そうすると、前述のさくらのクラウド側で共有設定したプランが表示されるので、該当するものを選択するだけです。
これでオンプレミス側のバックアップが実施されるたびにさくらのクラウドにデータが転送されるようになります。以下、実際にオンプレミス環境 (Arcserve Japan 東京オフィス) の RPS から、さくらのクラウド(東京リージョン 第2ゾーン)の Arcserve UDP コンソール/RPS へのレプリケート ジョブの結果と ping の結果 になります。どの程度パフォーマンスが出るのか参考にしていただければ幸いです。
・レプリケート ジョブのログ (さくらのクラウド側の Arcserve UDP コンソール / RPS のログ)
・オンプレミス (Arcserve Japan 東京オフィス) からさくらのクラウド (東京リージョン) への ping 結果
# まとめと補足
この記事で、さくらのクラウドにバックアップ データを転送するポイントや簡単な手順をお伝えしましたが、いかがでしたか?私もこの記事の執筆で、初めて「さくらのクラウド」上で Arcserve UDP の構築を行いましたが、UI がシンプルで簡単に構築することができました!
異なる Arcserve UDP コンソール間でレプリケートの詳細な説明は、下記ドキュメントにまとまっていますので、困ったことがあれば参照してみてください。
異なる UDP コンソールで管理されているデータ ストア間でデータをレプリケートする方法
また、クラウドにバックアップ環境を構築することによるセキュリティの懸念もあると思います。Arcserve UDP では、コンソールで多要素認証を設定できますので、万が一アカウント情報が流出したとしても、不正アクセスを防ぐことが可能です。詳細は以下をご覧ください。
Arcserve UDP 8.1新機能紹介(1):Arcserve UDP コンソールが多要素認証に対応!!
クラウドを使った災害対策を検討されている方は、国内トップクラスの大容量高速ネットワークを備えている「さくらのクラウド」と Arcserve UDP の組み合わせを是非ご検討ください。
最後に Arcserve UDP で必要になるライセンスをお伝えします。 Arcserve UDP はバックアップ対象のみにライセンスが必要なため、今回の記事でお伝えしたバックアップ データの転送においては、追加で必要となるライセンスはありません。ただ、記事の冒頭でお伝えした「③ バックアップ(「さくらのクラウド」上のバックアップ)」を行うには Arcserve UDP のライセンスが必須となります。この場合、さくらのクラウドからお求めやすい価格でご購入いただけるようになっています。詳細な情報は下記 URL をご覧ください。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。この記事の内容が少しでもご参考になれば幸いです。
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