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2026年8月 1日 (土)

Arcserve CRSのネットワーク設計術:バックアップと管理を分離するメリット

Arcserve Cyber Resilient Storage(以下、CRS と略記)は、Arcserve UDP復旧ポイント サーバのデータを守るオンプレミス向けのイミュータブル ストレージとして、多くの企業で導入が進んでいます。しかし、この堅牢なストレージを導入する際、意外と見落とされがちなのが「ネットワーク設計」です。

CRSはネットワークを通じて様々なコンポーネントと通信を行います。単一のネットワーク インターフェースですべての通信をまかなうことも可能ですが、エンタープライズの運用環境においては、役割ごとにネットワークを分離する構成もご検討ください。本記事では、CRSにおける「バックアップ データ転送用ネットワーク」と「管理・時刻同期用ネットワーク」を分離する構成案と、そのメリットについて解説します。

 

Arcserve CRSにおける主要な通信要件

ネットワークを分離する理由を理解するために、まずはCRSがどのような通信を行っているのか、主要なネットワーク要件を整理しておきましょう。

1. バックアップ データ転送通信(RPSとの通信)
CRSは、Arcserve UDPの復旧ポイントサーバ(RPS)のバックアップ データを保管します。この通信はLAN内で行われ、TCPの5000番から5099番ポートを使用します。バックアップやリストアの際には、大容量のデータ トラフィックがこのポートを通じてやり取りされます。

2. システム管理通信(SSH接続)
CRSは、専用コマンドのみを受け付けるセキュアなLinuxベースのOSで稼働します。日常的なステータス確認、設定変更、トラブル シューティングなどは、管理者端末からSSHクライアント(Tera Termなど)を用いてリモートで行えます。この通信には標準的なTCPの22番ポートが使用されます。

3. 時刻同期通信(NTP/NTS通信)
イミュータブル ストレージにおいて、「時刻」は最も重要な要素の一つです。指定した日時になるまでデータを削除させないという仕組みは、システム時刻の正確性に依存しているからです。そのためCRSでは、公開CA発行の証明書を備えたNTS(Network Time Security)対応のNTPサーバとの時刻同期が求められます。この通信には、UDP 123番およびTCP 4460番ポートが使用されます。

これらに加え、システムアップデート(TCP 443)やDNS名前解決(TCP/UDP 53)、テクニカル サポートへのログ送信など、インターネットへのアウトバウンド通信が存在します。

※ CRSからインターネットへの通信は、ステートフル インスペクションに対応したファイアウォール配下でもサポートされます。

 

推奨構成:データ ネットワークと管理ネットワークの分離

前述の通り、CRSには大きく分けて「バックアップ データを処理する通信」と、「システムの管理・維持に必要な通信」の2種類が存在します。これらを分離するのが、今回推奨するネットワーク構成です。

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• インターフェース1 = システム管理・時刻同期ネットワーク

  • 用途:SSHによるリモート管理、NTSによる時刻同期、DNS、システム アップデートなど。
  • 接続先:管理セグメント、およびインターネット(外部)へアクセス可能なセグメント。

• インターフェース2 = バックアップ データ転送ネットワーク

  • 用途:RPSからのバックアップ データ受信(TCP 5000~5099)。
  • 接続先:バックアップ専用の高速な閉域LANセグメント。

 

このようにネットワークを分離することで、システム全体にどのような恩恵があるのでしょうか。

 

ネットワーク分離構成がもたらす3つのメリット

メリット1:セキュリティの強化
最大のメリットは、セキュリティ要件の異なる通信経路を分離できる点です。

ランサムウェアの被害を想定した場合、攻撃者は業務サーバを踏み台にして業務LANのセグメントに侵入してくる可能性があります。

管理用ネットワークとバックアップ データ転送用ネットワークを物理的に分離しておけば、仮に業務LAN側のネットワークが掌握されたとしても、攻撃者はCRSの管理インターフェース(SSH)に到達することができません。管理アクセスを特定のネットワークのみに限定することで、CRSに対する多層防御が実現し、データの安全性が高まります。

メリット2:パフォーマンスと運用の安定化
サイバー攻撃の手口の1つに、業務LAN内の帯域を消費・枯渇させるボリューム ベース攻撃があります。これを受けた場合、管理者が状況を確認するためにSSH接続を試みても「応答が遅い」「接続がタイムアウトする」といった事態に陥りかねません。異常を検知して緊急の操作を行いたい場面で管理ポートにアクセスできないのは、運用上致命的です。

バックアップ データ転送用のネットワークと、SSHなどの管理ネットワークを業務LANと分離することで、業務LANでボリューム ベース攻撃を受けたとしても、管理操作のレスポンスや安定性が損なわれることはありません。これにより、管理者は確実かつ快適にCRSの状況をモニタリングし、制御することができます。

メリット3:イミュータブル性を担保する「NTS(時刻同期)」の確実な実行
前述の通り、CRSの「変更・削除不可(イミュータビリティ)」の機能は、システム時刻の正確性に依存しています。もし攻撃者が不正なNTPサーバを偽装し、CRSの時刻を「保存期間が過ぎた未来の時刻」に改ざんできてしまえば、ロックが解除され、CRS自らがデータを削除する危険性があります。

これを防ぐためにCRSは、暗号化通信によって時刻情報の改ざんやなりすましを防止する「NTS(Network Time Security)」による時刻同期を必要としています。しかし、業務LANは、セキュリティ上、インターネットから隔離された閉域網(ダークサイト)として構成しなければならない場合もあります。閉域網内にセキュアなNTS対応のローカルNTPサーバを構築するのは、証明書の管理等の面で導入ハードルが高くなります。

ネットワークを分離していれば、この課題を解決できます。データ転送用ポートはRPSとの閉域網に接続したまま、管理・外部通信用ポートだけをインターネットに接続し、パブリックなNTS対応NTPサーバと時刻同期を行わせることができます。ネットワーク要件(閉域網と外部通信)の矛盾を解消し、イミュータブル ストレージの要である「時間の信頼性」を担保できるのです。

 

CRS 1.6の新機能「ネットワーク プロファイル」による高度な運用

最後に、こうしたネットワーク構成を運用する上で強力な武器となる、Arcserve CRS 1.6(以下 CRS 1.6 と略記)から搭載された機能について触れておきましょう。

CRS 1.6では、ネットワーク プロファイル管理機能が追加されました。これは、ネットワークの接続設定を「プロファイル」として定義し、簡単に切り替えられる機能です。例えば、バックアップ用のインターフェースに対して固定IPアドレスを割り当てた static_ip というプロファイルをコマンド ラインから作成し、適用させることができます。

画期的なのは、有事の際の「アイソレーション(隔離)」への応用です。もし本番環境でランサムウェアの感染拡大が疑われる場合、CRSの管理画面から該当するネットワーク プロファイルを「Down(無効)」にするコマンドを実行するだけで、RPSとの接続を即座に論理遮断することができます。

サーバ ルームに駆け込んで物理的なLANケーブルを引き抜く必要はありません。安全な管理用ネットワーク(SSH)からのアクセスは維持したまま、データ転送ネットワークだけを瞬時に切り離し、CRS内のバックアップ データを隔離・保護できます。

 

まとめ

CRSは、ランサムウェア攻撃からArcserve UDPのバックアップ データを守る強力なイミュータブル バックアップ ソリューションです。

「バックアップ データ転送ネットワーク」と「システム管理・時刻同期ネットワーク」を「業務LAN」と分離する構成は、セキュリティの強化、パフォーマンスの安定化、そして確実な時刻同期という3つのメリットをもたらします。さらに、CRS 1.6 以降のネットワーク プロファイル機能を活用することで、有事の際の迅速な隔離運用も実現できます。

これからCRSの導入を検討される方、あるいは既に運用中の方は、ぜひこの「ネットワークの分離」を活用し、より堅牢で運用しやすいバックアップ インフラを構築してください。

 

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